🌊10分で聴く平家物語🌊
【平家物語 第5巻 大庭〈おおば〉が早馬】 治承四年九月二日、相模国の住人大庭三郎 景親《かげちか》が、 福原へ差し向けた早馬のもたらした報告は、新都を着々建設して、 平家独裁の政府を樹立し一門繁栄の夢をむさぼろうとした平家にとって、 驚くべき報…
【新都】 この年六月九日、新都の政事始めとして、造営の計画が練られた。 上卿《しょうけい》には徳大寺の左大将 実定卿《じっていのきょう》、 土御門宰相《つちみかどのさいしょうの》中将 通親卿《とうしんのきょう》、 奉行弁《ぶぎょうのべん》には、 …
【平家物語112 第5巻 都うつり①】 京都の街は公卿も庶民も動揺した。 治承四年六月三日の日、天皇は福原へ行幸し、 都うつりさせ給うとのことである。 都うつりの噂はかねて流れてはいたが、 まだまだ先のことであると人々は思っていた。 それが三日ときまっ…
【平家物語109 第4巻 鵺〈ぬえ〉①】 源三位入道頼政は、 摂津守頼光から五代目の子孫三河守頼綱の孫、 兵庫頭《ひょうごのかみ》仲政の子である。 保元の合戦のとき朝廷側につきさきがけしたが別に恩賞はなく、 平治の乱においても親類などを捨てて合戦に力…
【平家物語106 第4巻 若宮御出家①】 三位入道、渡辺などの党を殲滅した平家の兵たちは、 三井寺の大衆もまぜて凡《およ》そ五百ほどの首をあげた。 頼政の首級は遂に発見できなかったが、 彼の子息たちの首はすべて探し出された。 太刀、長刀の切先にこの首…
【平家物語100 第4巻 橋合戦①】 しばらく進むうちに、 高倉宮は宇治橋に来るまで六度も落馬した。 側近が昨夜お寝みにならぬお疲れのためであろうと、 平等院《びょうどういん》にお入れして休息させた。 敵襲をおもんばかって、宇治橋の橋板三間を引きはが…
【平家物語98 第4巻 大衆そろえ①】 三井寺は防備のため山を切り開いて、 大小の関所を作った。 こうした中で衆徒一同が集って評定が真剣に行なわれた。 「比叡は変心、頼みの奈良興福寺の援軍はまだ来ていない。 このまま徒らに時を延ばすのは平家を利するだ…
【平家物語95 第4巻 山門への牒状】 高倉宮を迎え、頼政一派を受け入れた三井寺の大衆は、 起り得べき事態にそなえて急遽その対策をねった。 ほら貝が吹かれ、 鐘が打ち鳴らされて衆徒が一堂に集められ、 真剣な会議が開かれた。 平家の大勢に抗するに所詮人…
【平家物語103 第4巻 宮の御最後①】 岸に先手をきっておどりあがった足利又太郎の装立ちは、 赤革縅の鎧、黄金作りの太刀、 二十四本背に差したるは切斑《きりふ》の矢、 重籐《しげとう》の弓を小脇にかいこんで、 乗る馬は連銭|葦毛《あしげ》、 鐙《あぶ…
【平家物語93 第4巻 競③〈きおう〉】 さて、高倉宮が三井寺へ逃げた十六日の夜、 京の源三位入道頼政の家は突然あちこちから火の手があがり、 どっと炎上し始めた。 火焔の明りで人々が見たのは、 甲冑《かっちゅう》に身を固めた武者三百余騎が 北へ目指し…
【平家物語90 第4巻 園城寺へ入御】 一方、女房装束に身をやつし、 市女笠《いちめがさ》で顔をかくして 三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、 更に近衛大路を東にすすんだ。 月を映してさわやかに流れる賀茂川を渡れば、 もう如意《にょい》山で…
【平家物語87 第4巻 信連合戦②〈のぶつらかっせん〉】 信連を信達と間違っておりました。すみません 御所の三条大路に面した門、 高倉通りへの門もすべて開け放して、 信連一人悠然と敵を待っていた。 この夜の信連の装束は、 萌黄匂《もえぎにおい》の腹巻…
【平家物語85 第4巻 いたちの沙汰】 さて、後白河法皇は、 成親、俊寛のように自分も遠い国、 遥かな小島に流されるのではなかろうかと、 お考えになっていたが、 そういうこともないまま鳥羽殿に 治承四年までお暮しになっていた。 この年の五月十二日の正…
【平家物語80 第4巻 還御〈かんぎょ〉】 高倉上皇が厳島にお着きになったのは、 三月二十六日、 清盛入道相国が最も寵愛した内侍の家が仮御所となり、 なか二日の滞在中には、 読経の会と舞楽がにぎやかに行なわれた。 満願の日、 導師三井寺の公顕《こうげ…
【平家物語77 第4巻 厳島御幸①】 治承四年正月一日、法皇の鳥羽殿《とばどの》には、 人の訪れる気配もなかった。 入道相国の怒り未だとけず、 公卿たちの近づくのを許さなかったし、 法皇も清盛をはばかっておられたからである。 正月の三日間というもの、 …
【平家物語75 第3巻 法皇被流〈ほうおうのながされ〉】 治承三年十一月二十日、 清盛の軍勢は法皇の御所を取り囲んだ。 「平治の乱の時と同じように、御所を焼打ちするそうだ」 という流言が広がって、 御所の中は、上を下への大騒ぎとなった。 その混乱のさ…
【平家物語73 第3巻 大臣流罪】 法印からの話を聞かれた法皇は、 もうそれ以上は何事も仰有《おっしゃ》らなかった。 清盛の話を、もっともと思われたのではなく、 いっても無駄と諦めてしまわれたものらしい。 十六日になって、 突然関白基房始め四十三人の…
【平家物語71 第3巻 法印問答①】 重盛に先立たれて以来、 清盛は福原の別邸に引きこもったまま、 世間に姿を見せなかった。 何かというと、 清盛の行動を邪魔立てするうるさい重盛であったが、 心の底から 清盛のことを親身に考えている息子でもあった重盛が…
【平家物語68 第3巻 無文の太刀】 重盛は、 未来を予見する不思議な能力を持っていた。 これは生前の話であるが、 ある夜、重盛は夢を見た。 場所ははっきりとはわからないが、 どこかの浜辺を歩いていると、 道の傍に大きな鳥居がある。 「これは、どこの鳥…
【平家物語65 第3巻 辻風〈つじかぜ〉】 治承三年五月十二日の正午、京都につむじ風が起った。 東北の方から、西南の方角に吹いて、 屋根や門は、四、五町から十町も吹きとばされ、 桁《けた》、なげし、柱は、あたりに飛び散った。 家屋の損失ばかりか、人…
【平家物語63 第3巻 有王③〈ありおう〉】 「本当だろうか、 本当にお前が来てくれたのだろうか、 毎日毎夜、都のことばかり思いつめて、 今では恋しい者の面影が、夢かうつつか、 わからなくなってしまったのだよ。 お前の来たのは夢ではないのか? 本当にお…
【平家物語61 第3巻 有王①〈ありおう〉】 たったひとり、鬼界ヶ島に取り残された俊寛が、 幼い頃から可愛がって使っていた有王という少年があった。 鬼界ヶ島の流人が 大赦になって都入りをするという話を伝え聞いた有王は、 喜び勇んで鳥羽まで出迎えにい…
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。 日常のスキマ時間に平家物語🌊にふれてみませんか🪷
【平家物語23 第2巻 座主流し①〈ざすながし〉】 治承元年五月五日、叡山の座主、明雲《めいうん》大僧正は、 宮中の出入りを差しとめられた。 同時に、天皇平安の祈りを捧げるために預っていた、 如意輪観音《にょいりんかんのん》の本尊も取上げられた。 更…
平家物語 第1巻 願立①〈がんだて〉 藤原氏の専横を抑え、院政の始りを開いた程の、 豪気な帝であった故白河院が、 「賀茂川の水、双六《すごろく》の骰《さい》、 比叡の山法師、これだけは、いかな私でも手に負えない」 といって嘆いたという話がある。 山…
平家物語 第1巻 鹿ケ谷〈ししがたに〉② ところで、成親と、動機こそ違え、志を同じくする者は、 まだ幾人かあった。 彼らがいつも好んで寄り集りの場所にしたのは、鹿ヶ谷にある、 これも同志の一人 俊寛《しゅんかん》の山荘である。 ここは、東山のふもと…
【平家物語 第1巻 鹿ケ谷 ししがたに】 鹿ケ谷 思い掛けぬ出来事があって、天皇元服の決め事も伸びのびになっていたが、 二十五日に無事に行われた。 基房は、太政大臣に昇任したが、 何となく割り切れない昇級でもあった。 年も明けて、嘉応三年正月、無事…
【平家物語 第1巻 妓王3〜4〈ぎおう〉】 妓王3 別れるとき、妓王は、居間の障子に一首の歌をかきつけた。 もえ出るもかるるも同じ野辺の草 いずれか秋にあわではつべき 今は得意絶頂の仏さま、 貴女《あなた》だっていつ何時、 私みたいなことにはなりかね…
【平家物語 第1巻 妓王1 〈ぎおう〉】 妓王1 当時、京都には、妓王、妓女《ぎじょ》と呼ばれる、 白拍子《しらびょうし》の、ひときわ衆に抜きん出た姉妹があった。 その母も刀自《とじ》と呼ばれ、昔、白拍子であった。 清盛が目をつけたのは、姉の妓王で…
【平家物語 第1巻 鱸〈すずき〉禿童〈かぶろ〉一門の栄華】 鱸〈すずき〉 仁平《にんぺい》三年正月、忠盛は、五十八歳で死に、 息子の清盛《きよもり》が、跡を継いだ。 清盛は、父親にもまして、才覚並々ならぬ抜目のない男だったらしい。 保元《ほげん》…