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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【10分で聴く源氏物語 20帖 朝顔5完】藤壺中宮は、気高く柔らかく完全な貴女。朝顔の姫君については、敬意の払われる友人。朧月夜尚侍、明石の上、東の院の女君‥源氏は、紫の上に女君達について話すby🐱

🌺【源氏物語641 第20帖 朝顔23】紫の上の機嫌をとる。優しく妻の髪を直したりして源氏はいるのであったが、夫人はいよいよ顔を向こうへやってしまって何も言わない。

〜「女院がお崩《かく》れになってから、

 陛下が寂しそうにばかりしておいでになるのが心苦しいことだし、

 太政大臣が現在では欠けているのだから、

 政務は皆私が見なければならなくて、

 多忙なために家《うち》へ帰らない時の多いのを、

 あなたから言えば例のなかったことで、

 寂しく思うのももっともだけれど、

 ほんとうはもうあなたの不安がることは何もありませんよ。

 安心しておいでなさい。

 大人になったけれどまだ少女のように思いやりもできず、

 私を信じることもできない、可憐なばかりのあなたなのだろう」

などと言いながら、

優しく妻の髪を直したりして源氏はいるのであったが、

夫人はいよいよ顔を向こうへやってしまって何も言わない。

「若々しい我儘《わがまま》をあなたがするのも私のつけた癖なのだ」

歎息《たんそく》をして、

短い人生に愛する人からこんなにまで恨まれているのも

苦しいことであると源氏は思った。

「斎院との交際で何かあなたは疑っているのではないのですか。

 それはまったく恋愛などではないのですよ。

 自然わかってくるでしょうがね。

 昔からあの人はそんな気のないいっぷう変わった女性なのですよ。

 私の寂しい時などに手紙を書いてあげると、

 あちらはひまな方だから時々は返事をくださるのです。

 忠実に相手になってもくださらないと、

 そんなことをあなたにこぼすほどのことでもないから、

 いちいち話さないだけです。

 気がかりなことではないと思い直してください」

などと言って、

源氏は終日夫人をなだめ暮らした。

 

🌺【源氏物語642 第20帖 朝顔24】美しい月の夜。源氏は御簾をあげ 童女を庭へおろして雪まろげをさせた。童女たちが、子どもらしく走り回ったり、雪玉を作ったりする。

〜雪のたくさん積もった上になお雪が降っていて、

松と竹がおもしろく変わった個性を見せている夕暮れ時で、

人の美貌《びぼう》もことさら光るように思われた。

「春がよくなったり、秋がよくなったり、

 始終人の好みの変わる中で、

 私は冬の澄んだ月が雪の上にさした無色の風景が

 身に沁《し》んで好きに思われる。

 そんな時にはこの世界のほかの大世界までが想像されて

 これが人間の感じる極致の境だという気もするのに、

 すさまじいものに冬の月を言ったりする人の浅薄さが思われる」

源氏はこんなことを言いながら御簾《みす》を巻き上げさせた。

 

月光が明るく地に落ちてすべての世界が白く見える中に、

植え込みの灌木類の押しつけられた形だけが哀れに見え、

流れの音も咽《むせ》び声になっている。

池の氷のきらきら光るのもすごかった。

 

源氏は童女を庭へおろして雪まろげをさせた。

美しい姿、頭つきなどが月の光にいっそうよく見えて、

やや大きな童女たちが、いろいろな袙《あこめ》を着て、

上着は脱いだ結び帯の略装で、もうずっと長くなっていて、

裾のひろがった髪は雪の上で鮮明にきれいに見られるのであった。

小さい童女は子供らしく喜んで走りまわるうちには

扇を落としてしまったりしている。

ますます大きくしようとしても、

もう童女たちの力では雪の球《たま》が動かされなくなっている。

童女の半分は東の妻戸の外に集まって、

自身たちの出て行けないのを残念がりながら、

庭の連中のすることを見て笑っていた。

 

🌺【源氏物語643 第20帖 朝顔25】紫の上に、藤壺中宮は、気高く柔らかく完全な貴女であったと話す。また朝顔の姫君については、敬意の払われる友人として手紙をかく交際相手という。

「昔 中宮がお庭に雪の山をお作らせになったことがある。

 だれもすることだけれど、

 その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。

 どんな時にもあの方がおいでになったらと、

 残念に思われることが多い。

 私などに対して法《のり》を越えた御待遇はなさらなかったから、

 細かなことは拝見する機会もなかったが、

 さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。

 私は何かのことがあると歌などを差し上げたが、

 文学的に見て優秀なお返事でないが、

 見識があるというよさはおありになって、

 お言いになることが皆深みのあるものだった。

 あれほど完全な貴女《きじょ》がほかにもあるとは思われない。

 柔らかに弱々しくいらっしゃって、

 気高い品のよさがあの方のものだったのですからね。

 しかしあなただけは血縁の近い女性だけあってあの方によく似ている。

 少しあなたは嫉妬《しっと》をする点だけが悪いかもしれないね。

 前斎院の性格はまたまったく変わっておいでになる。

 私の寂しい時に手紙などを書く交際相手で敬意の払われる、

 晴れがましい友人としては

 あの方だけがまだ残っておいでになると言っていいでしょう」

 と源氏が言った。

 

🌺【源氏物語644 第20帖 朝顔26】源氏は、紫の上に女君達について話す。朧月夜の尚侍、明石の上、東の院の女君‥こんな話をしながら夜はふけていった。

〜「尚侍《ないしのかみ》は

 貴婦人の資格を十分に備えておいでになる、

 軽佻《けいちょう》な気などは

 少しもお見えにならないような方だのに、

 あんなことのあったのが、私は不思議でならない」

 

「そうですよ。艶《えん》な美しい女の例には、

 今でもむろん引かねばならない人ですよ。

 そんなことを思うと自分のしたことで

 人をそこなった後悔が起こってきてならない。

 まして多情な生活をしては年が行ったあとで

 どんなに後悔することが多いだろう。

 人ほど軽率なことはしないでいる男だと思っていた

 私でさえこうだから」

源氏は尚侍の話をする時にも涙を少しこぼした。

 

「あなたが眼中にも置かないように軽蔑している山荘の女は、

 身分以上に貴婦人の資格というものを皆そろえて持った人ですがね、

 思い上がってますますよく見えるのも人によることですから、

 私はその点をその人によけいなもののようにも見ておりますがね。

 私はまだずっと下の階級に属する女性たちを知らないが、

 私の見た範囲でもすぐれた人はなかなかないものですよ。

 東の院に置いてある人の善良さは、

 若い時から今まで一貫しています。

 愛すべき人ですよ。

 ああはいかないものですよ。

 私たちは青春時代から信じ合った、そしてつつましい恋を続けてきたものです。

 今になって別れ別れになることなどはできませんよ。

 私は深く愛しています」

こんな話に夜はふけていった。

 

🌺【源氏物語645 第20帖 朝顔27 完】藤壺中宮を恋しく思いながら眠りにつくと、藤壺の宮の面影が見えた。お恨めしいふうで「恋の過ちが知れてしまい恥ずかしく苦しい思いをしています」とお言いになる。

月はいよいよ澄んで美しい。夫人が、

氷とぢ 岩間の水は 行き悩み

空澄む月の 影ぞ流るる

と言いながら、外を見るために少し傾けた顔が美しかった。

髪の性質《たち》、顔だちが恋しい故人の宮にそっくりな気がして、

源氏はうれしかった。

少し外に分けられていた心も取り返されるものと思われた。

鴛鴦《おしどり》の鳴いているのを聞いて、

源氏は、

かきつめて 昔恋しき 雪もよに

哀れを添ふる 鴛鴦《をし》のうきねか

と言っていた。

 

寝室にはいってからも

源氏は中宮の御事を恋しく思いながら眠りについたのであったが、

夢のようにでもなくほのかに宮の面影が見えた。

非常にお恨めしいふうで、

「あんなに秘密を守るとお言いになりましたけれど、

 私たちのした過失《あやまち》はもう知れてしまって、

 私は恥ずかしい思いと苦しい思いとをしています。

 あなたが恨めしく思われます」

とお言いになった。

返辞を申し上げるつもりでたてた声が、

夢に襲われた声であったから、夫人が、

「まあ、どうなさいました、そんなに」

と言ったので源氏は目がさめた。

非常に残り惜しい気がして、

張り裂けるほどの鼓動を感じる胸をおさえていると、涙も流れてきた。

夢のまったく醒《さ》めたのちでも源氏は泣くことをやめないのであった。

夫人はどんな夢であったのであろうと思うと、

自分だけが別物にされた寂しさを覚えて、

じっとみじろぎもせずに寝ていた。

とけて寝ぬ 寝覚《ざ》めさびしき 冬の夜に

結ぼほれつる 夢のみじかさ

源氏の歌である。

 

夢に死んだ恋人を見たことに心は慰まないで、

かえって恋しさ悲しさのまさる気のする源氏は、

早く起きてしまって、何とは表面に出さずに、

誦経《ずきょう》を寺へ頼んだ。

苦しい目を見せるとお恨みになったのも

きっとそういう気のあそばすことであろうと源氏に悟れるところがあった。

仏勤めをなされたほかに民衆のためにも功徳を多くお行ないになった宮が、

あの一つの過失のためにこの世での罪障が消滅し尽くさずにいるかと、

深く考えてみればみるほど源氏は悲しくなった。

 

自分はどんな苦行をしても寂しい世界に

贖罪《しょくざい》の苦しみをしておいでになる中宮の所へ行って、

罪に代わっておあげすることがしたいと、

こんなことをつくづくと思い暮らしていた。

中宮のために仏事を自分の行なうことは

どんな簡単なことであっても世間の疑いを受けることに違いない、

帝《みかど》の御心《みこころ》の鬼に

思召《おぼしめ》し合わすことになってもよろしくないと源氏ははばかられて、

ただ一人心で阿弥陀仏《あみだぶつ》を念じ続けた。

同じ蓮華《れんげ》の上に生まれしめたまえと祈ったことであろう。

なき人を 慕ふ心に まかせても

かげ見ぬ水の 瀬にやまどはん

と思うと悲しかったそうである。

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