google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【10分で聴く源氏物語 第11帖 花散里 〈はなちるさと〉】 五月雨の頃、源氏は故桐壺院の妃の麗景殿女御を訪ねる。妹の三の君(花散里)は源氏の恋人。姉妹は院の没後源氏の庇護を頼りに ひっそりと暮らすby🐈

🌸【源氏物語261 第11帖 花散里1】麗景殿の女御の妹君の花散里(はなちるさと)と古くからの恋仲であった源氏。ふと尋ねてみようと思った。

〜みずから求めてしている恋愛の苦は

昔もこのごろも変わらない源氏であるが、

ほかから受ける忍びがたい圧迫が近ごろになって

ますます加わるばかりであったから、

心細くて、

人間の生活というものからのがれたい欲求も起こるが、

さてそうもならない絆《ほだし》は幾つもあった。

麗景殿《れいげいでん》の女御《にょご》といわれた方は

皇子女もなくて、

院がお崩《かく》れになって以後は

まったくたよりない身の上になっているのであるが、

源氏の君の好意で生活はしていた。

この人の妹の三の君と源氏は若い時代に恋愛をした。

例の性格から関係を絶つこともなく、

また夫人として待遇することもなしに

まれまれ通っているのである。

女としては煩悶《はんもん》をすることの多い境遇である。

 

物哀れな心持ちになっているこのごろの源氏は、

急にその人を訪《と》うてやりたくなった心は

おさえきれないほどのものだったから、

五月雨《さみだれ》の珍しい晴れ間に行った。

目だたない人数を従えて、

ことさら簡素なふうをして出かけたのである。

 

🌸【源氏物語262 第11帖 花散里2】中川辺を通っていく和琴を弾く音がした。そこは源氏がただ一度きたことがある女の家だった。

〜中川辺を通って行くと、

小さいながら庭木の繁りようなどのおもしろく見える家で、

よい音のする琴を和琴《わごん》に合わせて派手に弾く音がした。

源氏はちょっと心が惹かれて、

往来にも近い建物のことであるから、

なおよく聞こうと、

少しからだを車から出してながめて見ると、

その家の大木の桂〈カツラ〉の葉のにおいが風に送られて来て、

加茂の祭りのころが思われた。

なんとなく好奇心の惹かれる家であると思って、

考えてみると、

それはただ一度だけ来たことのある女の家であった。

長く省みなかった自分が訪ねて行っても、

もう忘れているかもしれないがなどと思いながらも、

通り過ぎる気にはなれないで、

じっとその家を見ている時に杜鵑《ほととぎす》が

啼《な》いて通った。

 

源氏に何事かを促すようであったから、

車を引き返させて、

こんな役に馴れた惟光《これみつ》を使いにやった。

 をちかへりえぞ 忍ばれぬ杜鵑〈ホトトギス

 ほの語らひし 宿の垣根《かきね》に

この歌を言わせたのである。

 

惟光がはいって行くと、

この家の寝殿ともいうような所の西の端の座敷に女房たちが集まって、

何か話をしていた。

以前にもこうした使いに来て、

聞き覚えのある声であったから、

惟光は声をかけてから源氏の歌を伝えた。

座敷の中で若い女房たちらしい声で何かささやいている。

だれの訪れであるかがわからないらしい。

 

🌸【源氏物語263 第11帖 花散里3】歌を読みかけるも、女はわざと知らない風である。源氏はもっともであると思いつつも もの足らぬ気がした。

〜ほととぎす 語らふ声は それながら 

あなおぼつかな  五月雨《さみだれ》の空

こんな返歌をするのは、

わからないふうをわざと作っているらしいので、

「では門違いなのでしょうよ」

 と惟光が言って、出て行くのを、

主人《あるじ》の女だけは心の中でくやしく思い、

寂しくも思った。

知らぬふりをしなければならないのであろう、

もっともであると源氏は思いながらも物足らぬ気がした。

 

この女と同じほどの階級の女としては

九州に行っている五節《ごせち》が

可憐であったと源氏は思った。

どんな所にも源氏の心を惹《ひ》くものがあって、

それがそれ相応に源氏を悩ましているのである。

長い時間を中に置いていても、同じように愛し、

同じように愛されようと望んでいて、

多数の女の物思いの原因は

源氏から与えられているとも言えるのである。

 

🌸【源氏物語264 第11帖 花散里4】橘の木が懐かしい香を送る。女御は柔らかい気分の受け取れる上品な人であった。昔の宮廷の話をし 源氏は色々と思い出し泣いた。

〜目的にして行った家は、

何事も想像していたとおりで、

人少なで、寂しくて、身にしむ思いのする家だった。

最初に女御の居間のほうへ訪ねて行って、

話しているうちに夜がふけた。

二十日月が上って、

大きい木の多い庭がいっそう暗い蔭《かげ》がちになって、

軒に近い橘《たちばな》の木がなつかしい香を送る。

 

女御はもうよい年配になっているのであるが、

柔らかい気分の受け取れる上品な人であった。

すぐれて時めくようなことはなかったが、

愛すべき人として院が見ておいでになったと、

源氏はまた昔の宮廷を思い出して、

それから次々に昔恋しいいろいろなことを思って泣いた。

杜鵑がさっき町で聞いた声で啼《な》いた。

同じ鳥が追って来たように思われて源氏はおもしろく思った。

「いにしへのこと語らへば杜鵑いかに知りてか」

という古歌を

小声で歌ってみたりもした。

 

🌸【源氏物語265 第十一帖 花散里5】「橘の香をなつかしみ ほととぎす 花散る里を 訪ねてぞとふ」女御はしんみりとした気持ちになった。

〜「橘の 香をなつかしみ ほととぎす

 花散る里を 訪ねてぞとふ」

 昔の御代《みよ》が恋しくてならないような時には

 どこよりもこちらへ来るのがよいと今わかりました。

 非常に慰められることも、

 また悲しくなることもあります。

 時代に順応しようとする人ばかりですから、

 昔のことを言うのに

 話し相手がだんだん少なくなってまいります。

 しかしあなたは私以上にお寂しいでしょう」

と源氏に言われて、

もとから孤独の悲しみの中に浸っている女御も、

今さらのようにまた心がしんみりと

寂しくなって行く様子が見える。

人柄も同情をひく優しみの多い女御なのであった。

 人目なく 荒れたる宿は

 橘の花こそ軒の つまとなりけれ

とだけ言うのであるが、

さすがにこれは貴女《きじょ》であると

源氏は思った。

さっきの家の女以来

幾人もの女性を思い出していたのであるが、

それとこれとが比べ合わせられたのである。

🪷少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋 ぜひご覧ください🪷 https://syounagon.jimdosite.com