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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【🌹10分で聴く源氏物語 第4帖 夕顔10〈ゆうがお〉】源氏の君が病気と聞いた空蝉は手紙を書く。源氏は恋の熱情が冷めていたわけではないのである、空蝉とそして軒端荻にも手紙を書いた‥おいっ💢 by🙀

🌸夕顔と頭中将との姫君を引き取ることを望む源氏【源氏物語53 第4帖 夕顔19】

小さい子を一人 行方不明にしたと言って

中将が憂鬱《ゆううつ》になっていたが、

そんな小さい人があったのか」

と問うてみた。

「さようでございます。一昨年の春お生まれになりました。

 お嬢様で、とてもおかわいらしい方でございます」

「で、その子はどこにいるの、

 人には私が引き取ったと知らせないようにして

 私にその子をくれないか。

 形見も何もなくて寂しくばかり思われるのだから、

 それが実現できたらいいね」

 源氏はこう言って、

また、

「頭中将にもいずれは話をするが、

 あの人をああした所で死なせてしまったのが私だから、

 当分は恨みを言われるのがつらい。

 私の従兄《いとこ》の中将の子である点からいっても、

 私の恋人だった人の子である点からいっても、

 私の養女にして育てていいわけだから、

 その西の京の乳母にも何かほかのことにして、

 お嬢さんを私の所へつれて来てくれないか」

 と言った。

 

「そうなりましたらどんなに結構なことでございましょう。

 あの西の京でお育ちになってはあまりにお気の毒でございます。

 私ども若い者ばかりでしたから、

 行き届いたお世話ができないということで

 あっちへお預けになったのでございます」

 と右近は言っていた。

 

静かな夕方の空の色も身にしむ九月だった。

庭の植え込みの草などがうら枯れて、

もう虫の声もかすかにしかしなかった。

そして もう少しずつ紅葉の色づいた絵のような景色を

右近はながめながら、

思いもよらぬ貴族の家の女房になっていることを感じた。

 

五条の夕顔の花の咲きかかった家は

思い出すだけでも恥ずかしいのである。

竹の中で家鳩《いえばと》という鳥が

調子はずれに鳴くのを聞いて源氏は、

あの某院でこの鳥の鳴いた時に夕顔のこわがった顔が

今も可憐《かれん》に思い出されてならない。

 

「年は幾つだったの、

 なんだか普通の若い人よりもずっと若いようなふうに見えたのも

 短命の人だったからだね」

 

「たしか十九におなりになったのでございましょう。

 私は奥様のもう一人のほうの乳母の忘れ形見でございましたので、

 三位《さんみ》様がかわいがってくださいまして、

 お嬢様といっしょに育ててくださいましたものでございます。

 そんなことを思いますと、

 あの方のお亡《な》くなりになりましたあとで、

 平気でよくも生きているものだと恥ずかしくなるのでございます。

 弱々しいあの方をただ一人のたよりになる御主人と思って

 右近は参りました」

 

「弱々しい女が私はいちばん好きだ。

 自分が賢くないせいか、あまり聡明《そうめい》で、

 人の感情に動かされないような女はいやなものだ。

 どうかすれば人の誘惑にもかかりそうな人でありながら、

 さすがに慎《つつ》ましくて恋人になった男に

 全生命を任せているというような人が私は好きで、

 おとなしいそうした人を自分の思うように

 教えて成長させていければよいと思う」

源氏がこう言うと、

「そのお好みには遠いように思われません方の、

 お亡《かく》れになったことが残念で」

と右近は言いながら泣いていた。

 

空は曇って冷ややかな風が通っていた。

 寂しそうに見えた源氏は、

『見し人の 煙を雲と ながむれば

   夕《ゆふべ》の空も むつまじきかな』

と独言《ひとりごと》のように言っていても、

返しの歌は言い出されないで、

右近は、こんな時に二人そろっておいでになったらという思いで

胸の詰まる気がした。

源氏はうるさかった砧《きぬた》の音を思い出しても

その夜が恋しくて、

「八月九月|正長夜《まさにながきよ》、

  千声万声《せんせいばんせい》無止時《やむときなし》」

と歌っていた。

 

🌸空蝉と軒端荻に手紙を出す源氏【源氏物語 54 第5帖 夕顔20】 

今も伊予介の家の小君は 時々源氏の所へ行ったが、

以前のように源氏から手紙を託されて来るようなことがなかった。

自分の冷淡さに懲りておしまいになったのかと思って、

空蝉《うつせみ》は心苦しかったが、

源氏の病気をしていることを聞いた時にはさすがに歎《なげ》かれた。

それに夫の任国へ伴われる日が近づいてくるのも心細くて、

自分を忘れておしまいになったかと試みる気で、

このごろの御様子を承り、お案じ申し上げてはおりますが、

それを私がどうしてお知らせすることができましょう。

『問はぬをも などかと問はで 程ふるに

 いかばかりかは 思ひ乱るる』

『苦しかるらん 君よりも われぞ 益田《ますだ》の

 いける甲斐《かひ》なき』

という歌が思われます。

こんな手紙を書いた。

 

思いがけぬあちらからの手紙を見て源氏は珍しくもうれしくも思った。

この人を思う熱情も決して醒《さ》めていたのではないのである。

生きがいがないとはだれが言いたい言葉でしょう。

『うつせみの 世はうきものと 知りにしを

 また言の葉に かかる命よ』

はかないことです。

病後の慄《ふる》えの見える手で乱れ書きをした消息は美しかった。

蝉《せみ》の脱殻《ぬけがら》が忘れずに歌われてあるのを、

女は気の毒にも思い、うれしくも思えた。

こんなふうに手紙などでは好意を見せながらも、

これより深い交渉に進もうという意思は空蝉になかった。

理解のある優しい女であったという思い出だけは

源氏の心に留めておきたいと願っているのである。

もう一人の女は蔵人《くろうど》少将と結婚したという噂を

源氏は聞いた。

それはおかしい、処女でない新妻を少将はどう思うだろうと、

その夫に同情もされたし、

またあの空蝉の継娘《ままむすめ》はどんな気持ちでいるのだろうと、

それも知りたさに小君を使いにして手紙を送った。

 

死ぬほど煩悶《はんもん》している私の心はわかりますか。

『ほのかにも 軒ばの荻《をぎ》を むすばずば

 露のかごとを 何にかけまし』

その手紙を枝の長い荻《おぎ》につけて、

そっと見せるようにとは言ったが、

源氏の内心では粗相《そそう》して少将に見つかった時、

妻の以前の情人の自分であることを知ったら、

その人の気持ちは慰められるであろうという高ぶった考えもあった。

しかし小君は少将の来ていないひまをみて

手紙の添った荻の枝を女に見せたのである。

恨めしい人ではあるが自分を思い出して情人らしい手紙を

送って来た点では憎くも女は思わなかった。

悪い歌でも早いのが取柄《とりえ》であろうと

書いて小君に返事を渡した。

『ほのめかす 風につけても 下荻《したをぎ》の

 半《なかば》は 霜にむすぼほれつつ』

下手《へた》であるのを洒落《しゃ》れた書き方で

紛らしてある字の品の悪いものだった。

灯《ひ》の前にいた夜の顔も連想《れんそう》されるのである。

碁盤を中にして慎み深く向かい合ったほうの人の姿態には

どんなに悪い顔だちであるにもせよ、

それによって男の恋の減じるものでないよさがあった。

一方は何の深味もなく、

自身の若い容貌《ようぼう》に誇ったふうだったと源氏は思い出して、

やはりそれにも心の惹《ひ》かれるのを覚えた。

まだ軒端の荻との情事は清算されたものではなさそうである。

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