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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【🌹10分で聴く源氏物語 第4帖 夕顔9】夕顔を失い、胸も悲しみにふさがらせたまま帰途についた源氏は加茂川堤で落馬した。惟光は混乱しながらも源氏を支える。源氏は悲しみのあまり病のとこにつく by😿

🌸夕顔を失い 悲しみのあまり落馬する源氏【源氏物語 51 第4帖 夕顔17】 

「もう明け方に近いころだと思われます。

 早くお帰りにならなければいけません」

惟光《これみつ》がこう促すので、源氏は顧みばかりがされて、

胸も悲しみにふさがらせたまま帰途についた。

 

露の多い路《みち》に厚い朝霧が立っていて、

このままこの世でない国へ行くような寂しさが味わわれた。

某院の閨《ねや》にいたままのふうで夕顔が寝ていたこと、

その夜上に掛けて寝た源氏自身の紅の単衣にまだ巻かれていたこと、

などを思って、

全体あの人と自分はどんな前生の因縁があったのであろうと、

こんなことを途々《みちみち》源氏は思った。

 

馬をはかばかしく御して行けるふうでもなかったから、

惟光が横に添って行った。

加茂川堤に来てとうとう源氏は落馬したのである。

失心したふうで、

「家の中でもないこんな所で自分は死ぬ運命なんだろう。

 二条の院まではとうてい行けない気がする」

 と言った。

 

惟光の頭も混乱状態にならざるをえない。

自分が確《しか》とした人間だったら、

あんなことを源氏がお言いになっても、

軽率にこんな案内はしなかったはずだと思うと悲しかった。

川の水で手を洗って清水《きよみず》の観音を拝みながらも、

どんな処置をとるべきだろうと煩悶《はんもん》した。

源氏もしいて自身を励まして、

心の中で御仏《みほとけ》を念じ、

そして惟光たちの助けも借りて二条の院へ行き着いた。

 

 毎夜続いて不規則な時間の出入りを女房たちが、

「見苦しいことですね、

 近ごろは平生よりもよく微行《おしのび》をなさる中でも

 昨日《きのう》はたいへんお加減が悪いふうだったでしょう。

 そんなでおありになってまたお出かけになったりなさるのですから、

 困ったことですね」

こんなふうに歎息《たんそく》をしていた。

 

源氏自身が予言をしたとおりに、

それきり床について煩ったのである。

重い容体が二、三日続いたあとは

また甚《はなはだ》しい衰弱が見えた。

 

源氏の病気を聞こし召した帝《みかど》も

非常に御心痛あそばされて

あちらでもこちらでも間断なく祈祷《きとう》が行なわれた。

特別な神の祭り、祓《はら》い、修法《しゅほう》などである。

何にもすぐれた源氏のような人は

あるいは短命で終わるのではないかといって、

一天下の人がこの病気に関心を持つようにさえなった。

 

病床にいながら源氏は右近を二条の院へ伴わせて、

部屋《へや》なども近い所へ与えて、

手もとで使う女房の一人にした。

惟光《これみつ》は源氏の病の重いことに

顛倒《てんとう》するほどの心配をしながら、

じっとその気持ちをおさえて、

馴染《なじみ》のない女房たちの中へ

はいった右近のたよりなさそうなのに同情してよく世話をしてやった。

 

源氏の病の少し楽に感ぜられる時などには、

右近を呼び出して居間の用などをさせていたから、

右近はそのうち二条の院の生活に馴《な》れてきた。

濃い色の喪服を着た右近は、

容貌《ようぼう》などはよくもないが、

見苦しくも思われぬ若い女房の一人と見られた。

 

「運命があの人に授けた短い夫婦の縁から、

その片割れの私ももう長くは生きていないのだろう。

長い間たよりにしてきた主人に別れたおまえが、

さぞ心細いだろうと思うと、

せめて私に命があれば、

あの人の代わりの世話をしたいと思ったこともあったが、

私もあの人のあとを追うらしいので、おまえには気の毒だね」

と、ほかの者へは聞かせぬ声で言って、

弱々しく泣く源氏を見る右近は、

女主人に別れた悲しみは別として、

源氏にもしまたそんなことがあれば悲しいことだろうと思った。

二条の院の男女はだれも静かな心を失って

主人の病を悲しんでいるのである。

 

御所のお使いは雨の脚《あし》よりもしげく参入した。

帝の御心痛が非常なものであることを聞く源氏は、

もったいなくて、

そのことによって病から脱しようとみずから励むようになった。

 

🌸重態の源氏の回復【源氏物語 52 第4帖 夕顔18】

左大臣も徹底的に世話をした。

大臣自身が二条の院を見舞わない日もないのである。

そしていろいろな医療や祈祷《きとう》をしたせいでか、

二十日ほど重態だったあとに余病も起こらないで、

源氏の病気は次第に回復していくように見えた。

 

行触《ゆきぶ》れの遠慮の正規の日数も

この日で終わる夜であったから、

源氏は逢いたく思召《おぼしめ》す帝の御心中を察して、

御所の宿直所《とのいどころ》にまで出かけた。

 

退出の時は左大臣が自身の車へ乗せて邸《やしき》へ伴った。

病後の人の謹慎のしかたなども大臣がきびしく監督したのである。

この世界でない所へ蘇生《そせい》した人間のように

当分源氏は思った。

 

九月の二十日ごろに源氏はまったく回復して、

痩《や》せるには痩せたがかえって艶《えん》な趣の添った源氏は、

今も思いをよくして、またよく泣いた。

その様子に不審を抱く人もあって、

物怪《もののけ》が憑《つ》いているのであろうとも言っていた。

 

源氏は右近を呼び出して、ひまな静かな日の夕方に話をして、

「今でも私にはわからぬ。

 なぜだれの娘であるということをどこまでも私に隠したのだろう。

 たとえどんな身分でも、私があれほどの熱情で思っていたのだから、

 打ち明けてくれていいわけだと思って恨めしかった」

とも言った。

 

「そんなにどこまでも隠そうなどとあそばすわけはございません。

 そうしたお話をなさいます機会がなかったのじゃございませんか。

 最初があんなふうでございましたから、

 現実の関係のように思われないとお言いになって、

 それでもまじめな方なら

 いつまでもこのふうで進んで行くものでもないから、

 自分は一時的な対象にされているにすぎないのだと

 お言いになっては寂しがっていらっしゃいました」

右近がこう言う。

 

「つまらない隠し合いをしたものだ。

 私の本心ではそんなにまで隠そうとは思っていなかった。

 ああいった関係は私に経験のないことだったから、

 ばかに世間がこわかったのだ。

 御所の御注意もあるし、

 そのほかいろんな所に遠慮があってね。

 ちょっとした恋をしても、

 それを大問題のように扱われるうるさい私が、

 あの夕顔の花の白かった日の夕方から、

 むやみに私の心はあの人へ惹《ひ》かれていくようになって、

 無理な関係を作るようになったのも

 しばらくしかない二人の縁だったからだと思われる。

 しかしまた恨めしくも思うよ。

 こんなに短い縁よりないのなら、

 あれほどにも私の心を惹いてくれなければよかったとね。

 まあ今でもよいから詳しく話してくれ、

 何も隠す必要はなかろう。

 七日七日に仏像を描《か》かせて寺へ納めても、

 名を知らないではね。

 それを表に出さないでも、

 せめて心の中でだれの菩提《ぼだい》のためにと思いたいじゃないか」

と源氏が言った。

 

「お隠しなど決してしようとは思っておりません。

 ただ御自分のお口からお言いにならなかったことを、

 お亡《かく》れになってからおしゃべりするのは

 済まないような気がしただけでございます。

 御両親はずっと前にお亡《な》くなりになったのでございます。

 殿様は三位《さんみ》中将でいらっしゃいました。

 非常にかわいがっていらっしゃいまして、

 それにつけても御自身の不遇をもどかしく

 思召《おぼしめ》したでしょうが、

 その上寿命にも恵まれていらっしゃいませんで、

 お若くてお亡《な》くなりになりましたあとで、

 ちょっとしたことが初めで

 頭中将《とうのちゅうじょう》がまだ少将でいらっしったころに

 通っておいでになるようになったのでございます。

 三年間ほどは御愛情があるふうで御関係が続いていましたが、

 昨年の秋ごろに、

 あの方の奥様のお父様の右大臣の所からおどすようなことを

 言ってまいりましたのを、気の弱い方でございましたから、

 むやみに恐ろしがっておしまいになりまして、

 西の右京のほうに奥様の乳母《めのと》が住んでおりました

 家へ隠れて行っていらっしゃいましたが、

 その家もかなりひどい家でございましたからお困りになって、

 郊外へ移ろうとお思いになりましたが、 

 今年は方角が悪いので、

 方角|避《よ》けに

 あの五条の小さい家へ行っておいでになりましたことから、

 あなた様がおいでになるようなことになりまして、

 あの家があの家でございますから

 侘《わび》しがっておいでになったようでございます。

 普通の人とはまるで違うほど内気で、

 物思いをしていると人から見られるだけでも

 恥ずかしくてならないようにお思いになりまして、

 どんな苦しいことも寂しいことも

 心に納めていらしったようでございます」

右近のこの話で源氏は自身の想像が当たったことで

満足ができたとともに、

その優しい人がますます恋しく思われた。

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