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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【🌹10分で聴く源氏物語 第4帖 夕顔8】「私にもう一度、せめて声だけでも聞かせてください‥私はあなたに傾倒した。それだのに私をこの世に捨てて置いて、こんな悲しい目をあなたは見せる」源氏の君‥😿

🌸弱りきった源氏を支える惟光【源氏物語 49 第4帖 夕顔15】

「今お話ししたようにこまかにではなく、

 ただ思いがけぬ穢れにあいましたと申し上げてください。

 こんなので今日は失礼します」

素知らず顔には言っていても、

心にはまた愛人の死が浮かんできて、

源氏は気分も非常に悪くなった。

だれの顔も見るのが物憂《ものう》かった。

お使いの蔵人《くろうど》の弁《べん》を呼んで、

またこまごまと頭中将に語ったような行触《ゆきぶ》れの事情を

帝へ取り次いでもらった。

左大臣家のほうへも

そんなことで行かれぬという手紙が 行ったのである。

日が暮れてから惟光《これみつ》が来た。

行触《ゆきぶ》れの件を発表したので、

二条の院への来訪者は皆庭から取り次ぎをもって

用事を申し入れて帰って行くので、

めんどうな人はだれも源氏の居間にいなかった。

 

惟光を見て源氏は、

「どうだった、だめだったか」

と言うと同時に袖《そで》を顔へ当てて泣いた。

惟光も泣く泣く言う、

「もう確かにお亡《かく》れになったのでございます。

 いつまでお置きしてもよくないことでございますから、

 それにちょうど明日は葬式によい日でしたから、

 式のことなどを私の尊敬する老僧がありまして、

 それとよく相談をして頼んでまいりました」

「いっしょに行った女は」

「それがまたあまりに悲しがりまして、

 生きていられないというふうなので、

 今朝は渓《たに》へ飛び込むのでないかと心配されました。

 五条の家へ使いを出すというのですが、

 よく落ち着いてからにしなければいけないと申して、

 とにかく止めてまいりました」

惟光の報告を聞いているうちに、

源氏は前よりもいっそう悲しくなった。

「私も病気になったようで、死ぬのじゃないかと思う」

と言った。

「そんなふうにまでお悲しみになるのでございますか、

 よろしくございません。皆運命でございます。

 どうかして秘密のうちに処置をしたいと思いまして、

 私も自身でどんなこともしているのでございますよ」

「そうだ、運命に違いない。

 私もそう思うが軽率な恋愛 漁《あさ》りから、

 人を死なせてしまったという責任を感じるのだ。

 君の妹の少将の命婦《みょうぶ》などにも言うなよ。

 尼君なんかはまたいつもああいったふうのことを

 よくないよくないと小言に言うほうだから、

 聞かれては恥ずかしくてならない」

「山の坊さんたちにもまるで話を変えてしてございます」

と惟光が言うので源氏は安心したようである。

主従がひそひそ話をしているのを見た女房などは、

「どうも不思議ですね、

 行触《ゆきぶ》れだとお言いになって参内もなさらないし、

 また何か悲しいことがあるように

 あんなふうにして話していらっしゃる」

腑《ふ》に落ちぬらしく言っていた。

「葬儀はあまり簡単な見苦しいものにしないほうがよい」

 と源氏が惟光《これみつ》に言った。

「そうでもございません。

 これは大層にいたしてよいことではございません」

と否定してから、

惟光が立って行こうとするのを見ると、

急にまた源氏は悲しくなった。

 

🌸夕顔の亡骸に最後の別れを望む源氏【源氏物語 50 第4帖 夕顔16 】

「よくないことだとおまえは思うだろうが、

  私はもう一度 遺骸を見たいのだ。

 それをしないではいつまでも憂鬱が続くように思われるから、

馬ででも行こうと思うが」

主人の望みを、

とんでもない軽率なことであると思いながらも

惟光は止めることができなかった。

「そんなに思召《おぼしめ》すのならしかたがございません。

 では早くいらっしゃいまして、

 夜の更《ふ》けぬうちにお帰りなさいませ」

と惟光は言った。

 

五条通いの変装のために作らせた狩衣に 着更《きが》えなどして

源氏は出かけたのである。

病苦が朝よりも加わったこともわかっていて源氏は、

軽はずみにそうした所へ出かけて、

そこでまたどんな危険が命をおびやかすかもしれない、

やめたほうがいいのではないかとも思ったが、

やはり死んだ夕顔に引かれる心が強くて、

この世での顔を遺骸で見ておかなければ

今後の世界で

それは見られないのであるという思いが 心細さをおさえて、

例の惟光と随身を従えて出た。

非常に路《みち》のはかがゆかぬ気がした。

 

十七日の月が出てきて、加茂川の河原を通るころ、

前駆の者の持つ松明《たいまつ》の淡い明りに

鳥辺野《とりべの》のほうが見えるという

こんな不気味な景色にも

源氏の恐怖心はもう麻痺《まひ》してしまっていた。

ただ悲しみに胸が掻《か》き乱されたふうで目的地に着いた。

凄《すご》い気のする所である。

そんな所に住居の板屋があって、

横に御堂《みどう》が続いているのである。

仏前の燈明の影がほのかに戸からすいて見えた。

部屋の中には一人の女の泣き声がして、

その室の外と思われる所では、

僧の二、三人が話しながら声を多く立てぬ念仏をしていた。

近くにある東山の寺々の

初夜の勤行《ごんぎょう》も 終わったころで静かだった。

清水《きよみず》の方角にだけ灯《ひ》がたくさんに見えて

多くの参詣人の気配も聞かれるのである。

 

主人の尼の息子の僧が尊い声で経を読むのが聞こえてきた時に、

源氏はからだじゅうの涙がことごとく流れて出る気もした。

中へはいって見ると、灯をあちら向きに置いて、

遺骸との間に立てた屏風《びょうぶ》のこちらに

右近《うこん》は横になっていた。

どんなに侘《わび》しい気のすることだろうと源氏は同情して見た。

遺骸はまだ恐ろしいという気のしない物であった。

美しい顔をしていて、

まだ生きていた時の可憐さと少しも変わっていなかった。

 

「私にもう一度、せめて声だけでも聞かせてください。

 どんな前生の縁だったかわずかな間の関係であったが、

 私はあなたに傾倒した。

 それだのに私をこの世に捨てて置いて、

 こんな悲しい目をあなたは見せる」

もう泣き声も惜しまずはばからぬ源氏だった。

僧たちもだれとはわからぬながら、

死者に断ちがたい愛着を持つらしい男の出現を見て、

皆涙をこぼした。

 

源氏は右近に、

「あなたは二条の院へ来なければならない」

と言ったのであるが、

「長い間、それは小さい時から片時もお離れしませんで

 お世話になりました御主人ににわかにお別れいたしまして、

 私は生きて帰ろうと思う所がございません。

 奥様がどうおなりになったかということを、

 どうほかの人に話ができましょう。

 奥様をお亡くししましたほかに、

 私はまた皆にどう言われるかということも悲しゅうございます」

こう言って右近は泣きやまない。

「私も奥様の煙といっしょにあの世へ参りとうございます」

「もっともだがしかし、人世とはこんなものだ。

 別れというものに悲しくないものはないのだ。

 どんなことがあっても寿命のある間には死ねないのだよ。

気を静めて私を信頼してくれ」

と言う源氏が、また、

「しかしそういう私も、この悲しみでどうなってしまうかわからない」

と言うのであるから心細い。

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