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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【🌹10分で聴く源氏物語 第4帖 夕顔6】「‥ 私を愛さないで、こんな平凡な人をつれていらっしって 愛撫《あいぶ》なさるのはあまりにひどい。恨めしい方」魔性の女の出現 夕顔の女君の異変😱 by🐈

🌸魔性の女の出現【源氏物語 45 第4帖 夕顔11】

「私がどんなにあなたを愛しているかしれないのに、

   私を愛さないで、こんな平凡な人をつれていらっしって

  愛撫《あいぶ》なさるのはあまりにひどい。恨めしい方」

と言って横にいる女に手をかけて起こそうとする。

こんな光景を見た。

 

苦しい襲われた気持ちになって すぐ起きると、

その時に灯《ひ》が消えた。

不気味なので、太刀《たち》を引き抜いて枕もとに置いて、

それから右近を起こした。

右近も恐ろしくてならぬというふうで近くへ出て来た。

「渡殿《わたどの》にいる宿直《とのい》の人を起こして、

蝋燭《ろうそく》をつけて来るように言うがいい」

「どうしてそんな所へまで参れるものでございますか、 暗うて」

「子供らしいじゃないか」

笑って源氏が手をたたくとそれが反響になった。

限りない気味悪さである。

しかもその音を聞きつけて来る者はだれもない。

 

夕顔は非常にこわがってふるえていて、

どうすればいいだろうと思うふうである。

汗をずっぷりとかいて、意識のありなしも疑わしい。

「非常に物恐れをなさいます御性質ですから、

どんなお気持ちがなさるのでございましょうか」

と右近も言った。

弱々しい人で 今日の昼間も部屋の中を見まわすことができずに

空をばかりながめていたのであるからと思うと、

源氏はかわいそうでならなかった。

 

「私が行って人を起こそう。

  手をたたくと山彦《やまびこ》がしてうるさくてならない。

 しばらくの間ここへ寄っていてくれ」

と言って、

右近を寝床のほうへ引き寄せておいて、

両側の妻戸の口へ出て、

戸を押しあけたのと同時に渡殿についていた灯も消えた。

風が少し吹いている。

こんな夜に侍者は少なくて、

しかもありたけの人は寝てしまっていた。

院の預かり役の息子で、

平生 源氏が手もとで使っていた若い男、

それから侍童が一人、例の随身

それだけが宿直《とのい》をしていたのである。

源氏が呼ぶと返辞をして起きて来た。

 

「蝋燭《ろうそく》をつけて参れ。

  随身に弓の絃打《つるう》ちをして

 絶えず声を出して魔性に備えるように命じてくれ。

 こんな寂しい所で安心をして寝ていていいわけはない。

 先刻《せんこく》惟光が来たと言っていたが、 どうしたか」

「参っておりましたが、御用事もないから、

 夜明けにお迎えに参ると申して帰りましてございます」

こう源氏と問答をしたのは、

御所の滝口に勤めている男であったから、

専門家的に弓絃《ゆづる》を鳴らして、

「火 危《あぶな》し、火危し」

と言いながら、

父である預かり役の住居《すまい》のほうへ行った。

源氏はこの時刻の御所を思った。

殿上《てんじょう》の宿直役人が

姓名を奏上する名対面はもう終わっているだろう、

滝口の武士の宿直の奏上があるころであると、

こんなことを思ったところをみると、

まだそう深更でなかったに違いない。

寝室へ帰って、

暗がりの中を手で探ると夕顔はもとのままの姿で寝ていて、

右近がそのそばでうつ伏せになっていた。

「どうしたのだ。気違いじみたこわがりようだ。

  こんな荒れた家などというものは 、

  狐《きつね》などが人をおどしてこわがらせるのだよ。

  私がおればそんなものにおどかされはしないよ」

と言って、

源氏は右近を引き起こした。

 

🌸物言わぬ亡骸となった夕顔【源氏物語 46 第4帖 夕顔 12】

「とても気持ちが悪うございますので下を向いておりました。

 奥様はどんなお気持ちでいらっしゃいますことでしょう」

「そうだ、なぜこんなにばかりして」 と言って、

手で探ると夕顔は息もしていない。

動かしてみてもなよなよとして気を失っているふうであったから、

若々しい弱い人であったから、

何かの物怪《もののけ》にこうされているのであろうと思うと、

源氏は歎息《たんそく》されるばかりであった。

 

蝋燭《ろうそく》の明りが来た。

右近には立って行くだけの力がありそうもないので、

閨《ねや》に近い几帳《きちょう》を引き寄せてから、

「もっとこちらへ持って来い」

と源氏は言った。

主君の寝室の中へはいるという

まったくそんな不謹慎な行動をしたことがない 滝口は

座敷の上段になった所へもよう来ない。

「もっと近くへ持って来ないか。どんなことも場所によることだ」

灯《ひ》を近くへ取って見ると、

この閨の枕の近くに

源氏が夢で見たとおりの容貌をした女が見えて、

そしてすっと消えてしまった。

 

昔の小説などにはこんなことも書いてあるが、

実際にあるとはと思うと源氏は恐ろしくてならないが、

恋人はどうなったかという不安が先に立って、

自身がどうされるだろうかという恐れはそれほどなくて横へ寝て、

「ちょいと」

と言って不気味な眠りからさまさせようとするが、

夕顔のからだは冷えはてていて、息はまったく絶えているのである。

 

頼りにできる相談相手もない。

坊様などはこんな時の力になるものであるが

そんな人もむろんここにはいない。

右近に対して強がって何かと言った源氏であったが、

若いこの人は、

恋人の死んだのを見ると分別も何もなくなって、 じっと抱いて、

「あなた。生きてください。悲しい目を私に見せないで」  

と言っていたが、恋人のからだはますます冷たくて、

すでに人ではなく遺骸《いがい》であるという感じが強くなっていく。

 

右近はもう恐怖心も消えて夕顔の死を知って非常に泣く。

紫宸殿《ししんでん》に出て来た鬼は

貞信公《ていしんこう》を威嚇《いかく》したが、

その人の威に押されて逃げた例などを思い出して、

源氏はしいて強くなろうとした。

「それでもこのまま死んでしまうことはないだろう。

  夜というものは声を大きく響かせるから、そんなに泣かないで」

と源氏は右近に注意しながらも、

恋人との歓会がたちまちにこうなったことを思うと

呆然となるばかりであった。

 

滝口を呼んで、

「ここに、急に何かに襲われた人があって、苦しんでいるから、

 すぐに惟光朝臣《これみつあそん》の泊まっている家に行って、

早く来るように言えとだれかに命じてくれ。

兄の阿闍梨あじゃり》がそこに来ているのだったら、

それもいっしょに来るようにと惟光に言わせるのだ。

母親の尼さんなどが聞いて気にかけるから、

たいそうには言わせないように。

あれは私の忍び歩きなどをやかましく言って止める人だ」

こんなふうに順序を立ててものを言いながらも、

胸は詰まるようで、

恋人を死なせることの悲しさが

たまらないものに思われるのといっしょに、

あたりの不気味さがひしひしと感ぜられるのであった。

 

もう夜中過ぎになっているらしい。

風がさっきより強くなってきて、

それに鳴る松の枝の音は、

それらの大木に深く囲まれた寂しく古い院であることを思わせ、

一風変わった鳥がかれ声で鳴き出すのを、

梟《ふくろう》とはこれであろうかと思われた。

考えてみるとどこへも遠く離れて人声もしないこんな寂しい所へ

なぜ自分は泊まりに来たのであろうと、

源氏は後悔の念もしきりに起こる。

右近は夢中になって夕顔のそばへ寄り、

このまま慄《ふる》え死にをするのでないかと思われた。

それがまた心配で、源氏は一所懸命に右近をつかまえていた。

一人は死に、一人はこうした正体もないふうで、

自身一人だけが普通の人間なのであると思うと

源氏はたまらない気がした。

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