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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【🌊10分で聴く平家物語18】🥀少将乞請①②〜成親卿のご子息 丹波少将成経殿の妻は、平教盛殿の姫君。教盛殿は、自ら出家の覚悟まで見せて娘婿の成経殿の命乞いをする😿ありがたきは父の愛情 by🐈

平家物語 第2巻 少将乞請①〈しょうしょうこいうけ〉】

丹波少将|成経《なりつね》は、

その夜、院の御所の宿直で、まだ家には帰っていなかった。

そこへ、大納言の家来が、急を知らせにかけつけてきた。

始めて、事の子細を知った少将の驚きも深かった。

それにしても、宰相《さいしょう》殿から、

何ともいってこないのは変だ、と思っていた矢先、

宰相からも使いの者がとんできた。

宰相とは、清盛の弟 教盛《のりもり》のことであるが、

教盛の娘が成経の妻になっていたから、

成経には舅《しゅうと》であった。

「何事か存じませぬが、清盛公から、

 西八条へ出頭するようにというお達しが参っておりますが」

宰相の使いの言葉を聞くより早く、

少将は、その意味を察して、

法皇の側仕えの女房を呼び出すと、事の次第を物語った。

「昨晩は、何となく往来のあたりが騒然としておりまして、

 私なども、又、山法師が、陳情にでも参ったものかとばかり、

 うかつに考えておりましたが、

 何と、この成経の身に関りのあることだったのでございます。

 聞けば、父、大納言は、今夜斬られるとかのこと、

 私とても、同じ事であろうと思います。

 もう一度、院の御前に伺候《しこう》し、

 お別れをしたいと思いますが、おとがめをうけた身となっては、

 却ってご迷惑がかかってはと思うのでございますが」

年にも似ず、落着いた態度であったが、

女房はびっくりして、法皇にこの事をご注進申しあげた。

 

法皇も、今朝の清盛の使いで事件の起きた事は知っていたが、

さすがに側近く仕える者の身にも及んだのかと

改めて驚かれた様子だった。

「やっぱりそうだったのか、

 とうとう、もれてしまったのだな。

 それはそれとして、少将に遠慮せず参れと伝えよ」

院のお言葉に従って、少将が御前に進み出たが、

涙が先に立って、言葉も出ない。

法皇とて、思いは同じである。

顔を見交しては、袖を顔にあて泣くばかりである。

しかしそうそう長居もできないから、

少将は法皇の前を引下ってきた。

法皇は、少将の去りゆく姿をみながら、

「世も末というが、まことにそうじゃのう。

 これ限りで、再び少将にも逢えないのであろうな」

とまた涙をお流しになった。

 院中の人々も、少将の袖をとらえて離さず、

袂《たもと》にすがって、

いつまでもいつまでも別れを惜しんでは、

又ひとしきり涙を流すのであった。

 

舅の教盛の許には、

北の方がお産のため、実家に帰っていたが、

この知らせを聞いてから唯ならぬ身体が一層衰弱して、

床に就いていた。

少将は、御所を出てから、ずっと涙を流しっ放しであったが、

この北の方の哀れな様子を見ては、

いよいよ嘆きはつのる一方である。

少将の乳母《うば》で六条《ろくじょう》という女が、

「貴方様が、お生れなされた時から、

 お乳をあげ申して以来、我が年の老いゆくことよりも、

 ご成人が嬉しくそればかりが楽しみに、

 いつか、二十一年にもなってしまいました。

 院へお務めになるようになっても、

 お帰りが遅いのさえ心配で、

 お顔をみるまでは安心もできませんでしたのに、

 今はまた、どんな目にお遭《あ》いになるのでしょうか?」

と、よよとばかりに泣き崩れる。

少将も今更に事の恐しさが身にしみるけれど、

「そんなに泣くでない。宰相がおいでになるからには、

 命だけは、何とか乞い請《う》けて下さると思うよ」

と慰め顔にいったが、

六条は、耳もかさないで泣き崩れるばかりなのだった。

 

そうこうするうち、清盛からは、

しきりに、少将を同道せよというさいそくが来る。

宰相も、今は仕方なく、

「ともかく、行くだけ行ってみよう、

 その上で、又、どうにかなるであろう」

と少将と相乗りで、西八条にやってきた。

邸近くで車をとめ、取次ぎを頼むと、

丹波少将は、此の邸内には入れてはいかん」

という清盛の言いつけであった。

仕方なく少将は、近くの侍の家に一先ず置いて、

宰相が一人、門の内に入った。

宰相の姿が見えなくなると直ぐ、少将の囲りを軍兵が取り囲んだ。

宰相とも別れ、全く一人ぼっちになった少将の心細さは、

何ともいえないものだった。

🥀🎼廃教会 written by Heitaro Ashibe

 

平家物語33-2 第2巻 少将乞請②〈しょうしょうこいうけ〉】

中門に入った宰相に、清盛は目通りを許さなかった。

仕方なく宰相は源《げん》大夫判官 季貞《すえさだ》を通じて、

言葉を伝えて貰う事にした。

「つまらない人間と関り合いになったことは、

 返すがえすも残念ですが、これもいたし方ありません。

 成経に縁づいた娘が、身重の体で、

 実は今朝から、この嘆きのため、息も絶えだえなのです。

 如何《いかが》でございましょうか、

 少将一人生きていても如何《どう》なるものでもありません、

 暫くこの教盛にお預け下さらぬか、

 決して間違いなどは起さぬように厳重に監視いたします」

これを聞いて清盛は、

「又教盛のあれが始ったな、全くわけの判らんことばかり申して」

とろくすっぽ返事もしなかったが、暫くして、

「新大納言成親は、

 平家一門を滅して天下を乱そうとしたのじゃ、

 少将は、この成親の正真正銘の嫡子じゃ、

 宰相が彼と親しかろうが、親しくなかろうが、

 そんな事は知ったことではないが、

 それ程の重罪人をかばおうと思っても無駄じゃ。

 第一この反乱がもし成功していたら、

 今頃、宰相だってそうやって、

 のこのこと歩き廻ってなどおられなかった筈じゃからなあ」

清盛の言葉を宰相に伝えると、ひどく失望した様子で、

もう一度伝言を頼んだ。

「保元、平治の合戦以来、

 いつも殿のお命に代る覚悟で働いてきました私、

 この後も、一度び事が起らば、必ずご馬前にはせ参ずる覚悟で、

 又私が年老いて役に立たなくなっても、

 子供達が何人かおりますから、必ずや、一方の御楯《みたて》となって、

 手となり足となるつもりでいますのに、

 成経を一時お預け下さることさえ、お聞き入れないとは、

 どうやら、この教盛に二心あるとでもお思いとしか受取れません。

 それ程、ご信用がないのでしたら、

 この世にあって、何の生き甲斐がございます事やら、

 それならば、出家入道し、どこかの山里に庵を結んで、

 静かに菩提《ぼだい》をとむらいます。

 世にあれば、望みもでき、望みもかなわなければ、

 恨みも起るものですから、仏の道に入ってしまえば、

 そんな気持も起らないでしょうから」

季貞は清盛に宰相の言葉を伝え、

「どうやら宰相は、本当に諦めてしまったらしいようで、

 どうにでもお気の済むようにといっていられます」

と言い添えた。

清盛もさすがに驚いて、

「いくらなんでも、出家までせずともよいわ。

 仕方がない、少将を暫くの間、教盛に預けると申しておけ」

と漸くに折れた。

 

清盛の許しを聞いて、肩の重荷を下した教盛はしみじみと、

「全く子供など持つものではござらぬのう、

 娘婿《むすめむこ》だからこそ、これ程まで心を砕くので、

 全く赤の他人にはできぬことじゃのう」

と述懐した。

教盛の姿を見た少将は、走り寄ってたずねた。

「ご首尾は?」

「清盛公、かつてないお腹立ちで、お目通りも許されず、

 助命嘆願も受付けては下さらなかったのを、

 わしが出家入道するとまで申したもので、

 仕方なく、一時、私の家にいる事は許して下さった。

 しかし、これも長続きするかどうかはわからぬのう」

と暗然たる面持ちであった。

「いや、それはそれで、一時にせよ、おかげを持ちまして、

 命は伸びたのでございますが、父の方の事は如何なったか、

 お聞きにはなりませんでしたか?」

「そこまでは、とても手が廻らなかったのじゃよ」

少将は、さめざめと涙を流し、

「命を長らえさせて頂いたご恩は、何とも有難いのですけれど、

 命の惜しいのも、

 もう一度、生きて父に逢いたかったからのことで、

 父が斬られては、私一人生きて何になりましょう。

 それよりも、生きるも死ぬも、

 一緒にお考え下さるように申し上げて下さいませぬか」

「さよう、のう、そなたのことばかり考えていたから、

 つい父上の事にまで思い至らなかったが、

 聞くところに依れば、小松殿が今朝、

 いろいろ手を尽して助命をお願いしていたらしいから、

 ここ暫くはお命に別条ありますまい」

「それは、又何と有難い事で」

少将は、今度は、嬉しさに泣くなく手を合せた。

この窮境におち入っても、

尚、親の身の上に思いをはせる心は、

やはり誠の親子なれで、教盛も、貰い泣きしながら、

やはり持つべき者はわが子だと、つくづく思ったのである。

教盛と打ち連れて帰ってきた少将を見ると、

女たちは生き返った人を迎えるほどの喜び方で、

またまた話を聞いては嬉し泣きを続けた。

🥀🎼凍える雨 written by Heitaro Ashibe

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