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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【10分で聴く源氏物語 第12帖 須磨2〈すま〉】 須磨に旅立つ前、左大臣家に寄る。涙にくれる人々。秘めた恋人 召人の中納言の君と過ごす。源氏物語には、召人の姿を紫式部は優しく描いていますby 😿

🌊【源氏物語272 第12帖 須磨6】冤罪であるが、今以上の厳罰に遭わないために遠隔の地に移る方が良いと左大臣に話す。源氏も大臣も涙をおさえる袖を離すことができない。

〜「何事も皆前生の報いなのでしょうから、

 根本的にいえば自分の罪なのです。

 私のように官位を剥奪されるほどのことでなくても、

 勅勘《ちょっかん》の者は

 普通人と同じように生活していることは

 よろしくないとされるのは

 この国ばかりのことでもありません。

 私などのは遠くへ追放するという条項もあるのですから、

 このまま京におりましては

 なおなんらかの処罰を受けることと思われます。

 冤罪《えんざい》であるという自信を持って

 京に留まっていますことも朝廷へ済まない気がしますし、

 今以上の厳罰にあわない先に、

 自分から遠隔の地へ移ったほうがいいと思ったのです」

 などと、こまごま源氏は語っていた。

 

大臣は昔の話をして、

院がどれだけ源氏を愛しておいでになったかと、

その例を引いて、

涙をおさえる直衣の袖を顔から離すことができないのである。

源氏も泣いていた。

若君が無心に祖父と父の間を歩いて、

二人に甘えることを楽しんでいるのに心が打たれるふうである。

 

🌊【源氏物語273 第12帖 須磨7】娘が生きていたらどんなに嘆くだろうと、短命で亡くなって この悪夢を見ずに済んだことで はじめて慰めたと大臣は嘆く。

〜「亡《な》くなりました娘のことを、

 私は少しも忘れることができずに悲しんでおりましたが、

 今度の事によりまして、

 もしあれが生きておりましたなら、

 どんなに歎《なげ》くことであろうと、

 短命で死んで、

 この悪夢を見ずに済んだことではじめて慰めたのでございます。

 小さい方が老祖父母の中に残っておいでになって、

 りっぱな父君に接近されることのない月日の

 長かろうと思われますことが

 私には何よりも最も悲しゅうございます。

 昔の時代には真実罪を犯した者も、

 これほどの扱いは受けなかったものです。

 宿命だと見るほかはありません。

 外国の朝廷にもずいぶんありますように

 冤罪にお当たりになったのでございます。

 しかし、それにしてもなんとか言い出す者があって、

 世間が騒ぎ出して、処罰はそれからのものですが、

 どうも訳がわかりません」

大臣はいろいろな意見を述べた。

 

🌊【源氏物語274 第12帖 須磨8】源氏は秘めた恋人と過ごす。明け方の月が美しくて、春の花の木が盛りを失って 少しの花が若葉に咲き残った庭に 淡く霧がかかる。

〜三位《さんみ》中将も来て、

酒が出たりなどして夜がふけたので

源氏は泊まることにした。

女房たちをその座敷に集めて話し合うのであったが、

源氏の隠れた恋人である中納言の君が、

人には言えない悲しみを一人でしている様子を

源氏は哀れに思えてならないのである。

皆が寝たあとに源氏は中納言を慰めてやろうとした。

源氏の泊まった理由はそこにあったのである。

翌朝は暗い間に源氏は帰ろうとした。

明け方の月が美しくて、

いろいろな春の花の木が皆盛りを失って、

少しの花が若葉の蔭《かげ》に咲き残った庭に、

淡く霧がかかって、

花を包んだ霞《かすみ》がぼうとその中を白くしている美は、

秋の夜の美よりも身にしむことが深い。

隅《すみ》の欄干によりかかって、

しばらく源氏は庭をながめていた。

中納言の君は見送ろうとして妻戸をあけてすわっていた。

「あなたとまた再会ができるかどうか。

 むずかしい気のすることだ。

 こんな運命になることを知らないで、

 逢えば逢うことのできたころにのんきでいたのが残念だ」

と源氏は言うのであったが、

女は何も言わずに泣いているばかりである。

若君の乳母《めのと》の宰相の君が使いになって、

大臣夫人の宮の御挨拶《あいさつ》を伝えた。

 

🌊【源氏物語275 第12帖 須磨9】若君の乳母の宰相の君が大臣夫人の挨拶を伝えた。宰相の君は鼻声になっていて深く悲しんでいる風である。

〜「お目にかかってお話も伺いたかったのですが、

 悲しみが先だちまして、

 どうしようもございませんでしたうちに、

 もうこんなに早くお出かけになるそうです。

 そうなさらないではならないことになっておりますことも

 何という悲しいことでございましょう。

 哀れな人が眠りからさめますまでお待ちになりませんで」

聞いていて源氏は、泣きながら、

 鳥部《とりべ》山 燃えし煙も まがふやと

 海人《あま》の塩焼く 浦見にぞ行く

これをお返事の詞《ことば》ともなく言っていた。

「夜明けにする別れはみなこんなに悲しいものだろうか。

 あなた方は経験を持っていらっしゃるでしょう」

 

「どんな時にも別れは悲しゅうございますが、

 今朝の悲しゅうございますことは

 何にも比較ができると思えません」

宰相の君の声は鼻声になっていて、

言葉どおり深く悲しんでいるふうであった。

 

🌊【源氏物語276 第12帖 須磨10】物思いをしながら出ていく源氏を見ては虎も狼も泣かずにいられないであろう。左大臣家の人々は咽び泣きの声で満たされた。

「ぜひお話ししたく存じますこともあるのでございますが、

 さてそれも申し上げられませんで

 煩悶《はんもん》をしております心をお察しください。

 ただ今よく眠っております人に今朝また逢ってまいることは、

 私の旅の思い立ちを躊躇させることになるでございましょうから、

 冷酷であるでしょうがこのまままいります」

と源氏は宮へ御挨拶《あいさつ》を返したのである。

 

帰って行く源氏の姿を女房たちは皆のぞいていた。

落ちようとする月が一段明るくなった光の中を、

清艶《せいえん》な容姿で、

物思いをしながら出て行く源氏を見ては、

虎《とら》も狼《おおかみ》も泣かずにはいられないであろう。

ましてこの人たちは源氏の少年時代から侍していたのであるから、

言いようもなくこの別れを悲しく思ったのである。

源氏の歌に対して宮のお返しになった歌は、

 亡き人の 別れやいとど 隔たらん

 煙となりし 雲井ならでは

というのである。

今の悲しみに以前の死別の日の涙も添って流れる人たちばかりで、

左大臣家は女のむせび泣きの声に満たされた。

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