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いにしえの都の高貴なネコ様のつぶやき🌸

我は、いにしえの都の高貴なネコ様🐱マロン🍀 下僕1号👩 下僕2号👨‍💼と ゆるりと暮らしておる。そんな我のつぶやきである🐱💖 

【10分で聴く源氏物語 第9帖 葵2〈あおい〉】賀茂祭の日の葵上と御息所の車争い。六条御息所は深く傷ついた😢そして女の恨みは張本人の男でなく女に向かうのが哀しいことよ‥by 😿

🪷女の恨みはなぜか 女に向かうもの【源氏物語132 第九帖 葵 5】

邸《やしき》を出たのはずっと朝もおそくなってからだった。

この一行はそれほどたいそうにも見せないふうで出た。

車のこみ合う中へ幾つかの左大臣家の車が続いて出て来たので、

どこへ見物の場所を取ろうかと迷うばかりであった。

 

貴族の女の乗用らしい車が多くとまっていて、

つまらぬ物の少ない所を選んで、

じゃまになる車は皆|除《の》けさせた。

その中に外見は網代車《あじろぐるま》の

少し古くなった物にすぎぬが、

御簾の下のとばりの好みもきわめて上品で、

ずっと奥のほうへ寄って乗った人々の服装の優美な色も

童女上着の汗袗《かざみ》の端の少しずつ洩れて見える様子にも、

わざわざ目立たぬふうにして

貴女《きじょ》の来ていることが思われるような車が二台あった。

 

「このお車はほかのとは違う。

 除《の》けられてよいようなものじゃない」

と言ってその車の者は手を触れさせない。

双方に若い従者があって、

祭りの酒に酔って気の立った時にすることは

はなはだしく手荒いのである。

 

馬に乗った大臣家の老家従などが、

「そんなにするものじゃない」

と止めているが、

勢い立った暴力を止めることは不可能である。

 

斎宮《さいぐう》の母君の御息所が物思いの慰めになろうかと、

これは微行で来ていた物見車であった。

素知らぬ顔をしていても

左大臣家の者は皆それを心では知っていた。 

 

🪷車争い 深く傷つく御息所【源氏物語133 第九帖 葵6】

「それくらいのことでいばらせないぞ、

 大将さんの引きがあると思うのかい」

などと言うのを、

供の中には源氏の召使も混じっているのであるから、

抗議をすれば、いっそう面倒になることを恐れて、

だれも知らない顔を作っているのである。

 

とうとう前へ大臣家の車を立て並べられて、

御息所の車は葵夫人の女房が乗った幾台かの車の奥へ押し込まれて、

何も見えないことになった。

それを残念に思うよりも、

こんな忍び姿の自身のだれであるかを見現わして

ののしられていることが口惜しくてならなかった。

 

車の轅《ながえ》を据《す》える台なども

脚《あし》は皆折られてしまって、

ほかの車の胴へ先を引き掛けて

ようやく中心を保たせてあるのであるから、

体裁の悪さもはなはだしい。

 

どうしてこんな所へ出かけて来たのかと御息所は思うのであるが

今さらしかたもないのである。

見物するのをやめて帰ろうとしたが、

他の車を避けて出て行くことは困難でできそうもない。

そのうちに、

「見えて来た」  

と言う声がした。

行列をいうのである。

それを聞くと、

さすがに恨めしい人の姿が待たれるというのも

恋する人の弱さではなかろうか。

 

🪷深く愛する故の妄執【源氏物語134 第九帖 葵7】

源氏は御息所の来ていることなどは

少しも気がつかないのであるから、

振り返ってみるはずもない。

気の毒な御息所である。

 

前から評判のあったとおりに、

風流を尽くした物見車に

たくさんの女の乗り込んでいる中には、

素知らぬ顔は作りながらも

源氏の好奇心を惹《ひ》くのもあった。

微笑《ほほえみ》を見せて行くあたりには

恋人たちの車があったことと思われる。

 

左大臣家の車は一目で知れて、

ここは源氏もきわめてまじめな顔をして通ったのである。

行列の中の源氏の従者がこの一団の車には敬意を表して通った。

 

侮辱されていることを

またこれによっても御息所はいたましいほど感じた。

影をのみ みたらし川の つれなさに

身のうきほどぞ いとど知らるる  

こんなことを思って、涙のこぼれるのを、

同車する人々に見られることを御息所は恥じながらも、

また常よりもいっそうきれいだった源氏の馬上の姿を

見なかったならとも思われる心があった。 

 

🌷今も昔も祭りはワクワク【源氏物語135 第九帖 葵8】

行列に参加した人々は

皆 分相応に美しい装いで身を飾っている中でも

高官は高官らしい光を負っていると見えたが、

源氏に比べるとだれも見栄えがなかったようである。

 

大将の臨時の随身を、

殿上にも勤める近衛の尉《じょう》が

するようなことは例の少ないことで、

何かの晴れの行幸などばかりに許されることであったが、

今日は蔵人《くろうど》を兼ねた右近衛《うこんえ》の尉が

源氏に従っていた。

そのほかの随身も顔姿ともによい者ばかりが選ばれてあって、

源氏が世の中で重んぜられていることは、

こんな時にもよく見えた。

 

この人にはなびかぬ草木もないこの世であった。

壺装束《つぼしょうぞく》といって頭の髪の上から上着をつけた、

相当な身分の女たちや尼さんなども、

群集の中に倒れかかるようになって見物していた。

 

平生こんな場合に尼などを見ると、

世捨て人がどうしてあんなことをするかと醜く思われるのであるが、

今日だけは道理である。

光源氏を見ようとするのだからと同情を引いた。

 

着物の背中を髪でふくらませた、卑しい女とか、

労働者階級の者までも皆手を額に当てて源氏を仰いで見て、

自身が笑えばどんなおかしい顔になるかも知らずに喜んでいた。

 

また源氏の注意を惹《ひ》くはずもない

ちょっとした地方官の娘なども、

せいいっぱいに装った車に乗って、

気どったふうで見物しているとか、

こんないろいろな物で一条の大路《おおじ》はうずまっていた。

 

🌺結婚を選ばぬ愛の形🌸朝顔の姫君【源氏物語136 第九帖 葵9】

源氏の情人である人たちは、

恋人のすばらしさを眼前に見て、

今さら自身の価値に反省をしいられた気がした。

だれもそうであった。

 

式部卿の宮は桟敷《さじき》で見物しておいでになった。

まぶしい気がするほどきれいになっていく人である。

あの美に神が心を惹《ひ》かれそうな気がすると

宮は不安をさえお感じになった。

 

宮の朝顔の姫君はよほど以前から今日までも

忘れずに愛を求めてくる源氏には

普通の男性に見られない誠実さがあるのであるから、

それほどの志を持った人は

少々欠点があっても好意が持たれるのに、

ましてこれほどの美貌の主であったかと思うと

一種の感激を覚えた。

 

けれどもそれは結婚をしてもよい、

愛に報いようとまでする心の動きではなかった。

宮の若い女房たちは聞き苦しいまでに源氏をほめた。  

 

翌日の加茂祭りの日に左大臣家の人々は見物に出なかった。

源氏に御禊《みそぎ》の日の車の場所争いを

詳しく告げた人があったので、

源氏は御息所《みやすどころ》に同情して

葵夫人の態度を飽き足らず思った。

 

🌹御息所を訪問したが会ってもらえない源氏【源氏物語137 第九帖 葵10】

貴婦人としての資格を十分に備えながら、

情味に欠けた強い性格から、

自身はそれほどに憎んではいなかったであろうが、

そうした一人の男を巡って

愛の生活をしている人たちの間は

また一種の愛で

他を見るものであることを知らない女主人の意志に

習って付き添った人間が御息所を侮辱したに違いない、

見識のある上品な貴女である御息所は

どんなにいやな気がさせられたであろうと

気の毒に思ってすぐに訪問したが、

斎宮がまだ邸《やしき》においでになるから、

神への遠慮という口実で逢《あ》ってくれなかった。

 

源氏には自身までもが恨めしくてならない、

現在の御息所の心理はわかっていながらも、

どちらもこんなに自己を主張するようなことがなくて

柔らかに心が持てないのであろうかと歎息《たんそく》されるのであった。

 

祭りの日の源氏は左大臣家へ行かずに二条の院にいた。

そして町へ見物に出て見る気になっていたのである。

西の対へ行って、惟光《これみつ》に車の用意を命じた。

「女連も見物に出ますか」

と言いながら、

源氏は美しく装うた紫の姫君の姿を笑顔でながめていた。

 

「あなたはぜひおいでなさい。私がいっしょにつれて行きましょうね」  

平生よりも美しく見える少女の髪を手でなでて、

「先を久しく切らなかったね。今日は髪そぎによい日だろう」

源氏はこう言って、

陰陽道《おんみょうどう》の調べ役を呼んでよい時間を聞いたりしながら、

「女房たちは先に出かけるといい」  

と言っていた。

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